NHKのドキュメンタリー番組より日本の民間宇宙企業「スペースワン」が開発する小型ロケット「カイロス」は、和歌山県串本町の専用発射場「スペースポート紀伊」を拠点に打ち上げが進められています。直近では2026年3月5日に3号機が打ち上げられたものの飛行中断となり、現在は次なる4号機に向けた準備が進められています。
カイロスのロケット開発における「手順遵守」というパラダイムは、失敗の本質的な原因である。組み立て責任者が「手順は守っている」と述べたことは、まさにこの問題の核心を突いている。99.7%(3シグマ)程度の品質レベルは、一般的な製造現場では許容されても、一度打ち上げたら修正不可能なロケット開発においては「失敗」を意味する。求められるのは、手順の遵守という受動的な行為ではなく、作業に内在するノウハウを形式知化し、多層的に織り込むことでシステムの頑健性(ロバストネス)を能動的に構築する「行為保証」という思想である。このアプローチを怠り、個人の注意力に依存する現在の組み立て体制が続く限り、類似の失敗は再発する可能性が高い。
なぜ「手順遵守」では不十分なのか?
1.「手順遵守」の品質限界
現象 … NHKのドキュメンタリー番組内で、カイロスロケットの組み立て責任者が「手順は守っているんだけどなぁ」と発言した。これは、出来映えが守られていれば品質は担保されるはずだ、という一般的な製造業の思想を反映している。
メカニズム … 標準的な手順遵守は、品質レベルを約99.7%(3シグマ)に留める。これは一般的な製品には十分かもしれないが、ロケットのように打ち上げ後の修正・修理が不可能なシステムにとっては、この0.3%(3000PPM)の不具合率が致命的な結果を招く。
根本原因は、失敗を許容しないシステムにおいて、保証レベルが低すぎる品質思想を採用していること。カイロスの場合、99.7%の成功率は実質的な失敗と同義である。
2. 解決策としての「行為保証」 ※行為保証とは(Webサイト参照)
基本概念としては、作業者が無意識に行っている失敗しないためのカン・コツ・急所のノウハウ(暗黙知)を形式知化し、作業手順に意図的に組み込むことで、プロセスの頑健性(ロバストネス)を高める品質改善手法。
※「プロセスの頑健化」「ロバスト3」… 行為保証を3つ重ねる。ノウハウを多層的に作業に織り込むことで、単なる手順遵守を超えた品質保証レベルを構築する。
期待できる効果は、実行率を85%まで高めることで、不良率は2.54ppmレベル(99.999%超の合格率、いわゆる6シグマ以上)に到達可能となる。これにより、ヒューマンエラー(「見ていないだけ」)に起因する重大事故のリスクを構造的に低減する。
過去の実績 … はじめて行為保証に取り組んだ 株式会社ノーリツ では、年間200億円超の修理代が発生していた状況から、2012年頃には市場クレームがほぼゼロの状態を実現した。その他、実績が多数に及ぶ(Webサイト導入実績参照)
3. カイロスへの提案
現在の「手順を守っている」というレベルでは、前回と現場でやっていることは変わらない。同様にまた失敗する可能性が高いと評価する。解決策として、カイロスのような極めて高い信頼性が要求されるプロジェクトでは、行為保証レベルでの「ロバスト4」や「ロバスト5」レベルの頑健性を持つ作業設計が不可欠である。ハインリッヒの法則が示すように、見過ごされた無数の「ヒヤリ・ハット」(見ていないだけの状態)がいずれ重大な失敗に繋がる。個人の注意力に頼るのではなく、失敗が発生し得ない仕組み(工程設計)そのものを構築すべきである。
一般的に、ヒューマンエラーの取り組みでは人の作業は「定数」と捉えられており、手順ややり方、仕組みでの対策は「変数」と捉えているが「行為保証という考え方で不良をなくしたアプローチは人の作業は変数」と捉えて出た結果である。
今日の常識的な出来映えを基準にした品質管理を見直すきっかけになればと願います。