マスメディアでは、施設の危機意識などを問題に上げる記事が多いですが、果たして問題はそこだけなのか?確かに危機意識は大事ですが、そもそも現場にいる職員は、子どもに危険があれば避けようとするはずですが、今回のように避けられない事案が発生しています。
「意識=記憶」ですので、時間の経過とともに忘れていきます。薄れていくものなので、大きな問題は管理能力となってくるかと思いますが、管理体制や管理能力の観点でも、そもそも発生しないようにしくみで対策するなら、答えは「バスの送迎を止める」ことになってしまいます。バスの送迎サービスを事故なく継続するために、マニュアルやルールの「しくみ」だけでなく、それを「運用」する管理者能力の教育・訓練(練習)や、意識や価値観を造り、組織全体で守る力を向上させる「土壌」の育成が必要です。
マスメディアの記事を見てみると、再発防止策としてバス内で帽子を集めたり、土足厳禁にして靴を集めたりして、残っていないを確認するなど、仕組みで対策することや、バスの積載重量でセンサー感知することや、AIカメラで監視するシステムなど、自動化する対策を取る試みが行われています。一見正しいアプローチに見えますが、時間が経てば、チェックをし忘れたりやらなかったり、問題は再発しています。結局のところ、スイッチをオンにし忘れたりすることがなくらない限り、対策(再発しない)にはなりません。道具や設備、システムを使った対策をとれば、その事象がなくなったり、一時的になくなったりするので、対策できたように感じますが、その道具や設備、システムを設定・調整・メンテナンスするのは、人が行いますので、事象を変えて、違う形で事故が再発してしまいます。
例えば介護施設で介助する服薬の介助で、違う利用者に服薬させてしまったり、服薬介助を忘れたり、薬を落としてしまったり、落とされたりといった事故(誤薬)があります。服薬介助する薬袋を朝・昼・夜・眠前などタイミング分けて、箱や袋に入れて、服薬介助の段取りをする場合がありますが、その箱や袋に利用者の顔写真をつけて、服薬事故がなくなりましたとありますが、一時的なもので、時間が経てば再発していますし、服薬介助を忘れる失敗は防げません。
このように、すべて「しくみ」で対策する方向で考えられますが「しくみ」では、対策できない作業もあります。結局のところ「ヒューマンエラーをなくさない限り、事故はなくならない。」という結論に至ってしまうのではないでしょうか?ある福祉施設では「行為保証」という考え方で「うっかり」「勘違い」「思い込み」といった理由で発生していた服薬事故発生を「ゼロ」で、管理することが出来るようになりました。そもそも、皆さんが使っている「ヒューマンエラー」という言葉の意味は、本来の「ヒューマンエラー」の意味と違います。
ヒューマンエラーを研究されている先生方が言われていますが「ヒューマンエラー」は結果です。原因ではありません。皆さんがよく使われる「うっかり」「勘違い」「思い込み」といった「ヒューマンエラー」という言葉は、原因ではなく結果なのです。先生方は「人は必ず失敗する」を前提に研究をされています。何千メートル上空を飛んでる飛行機のエンジンが爆発した機内で行う作業失敗など、不眠不休の疲労限界を超えた状況など、極限状態を含め研究されています。しかし、私たちの仕事で発生する「ヒューマンエラー」は、作業がしやすく、安全にも考慮され、労働時間も決められた状況で発生する「うっかり」「勘違い」「思い込み」といった失敗です。ほとんどの皆さんは、「ヒューマンエラー」を原因ととられ、その対策は難しい、不可能であると考えてしまいます。
「人は必ず失敗するということを前提に考えられているヒューマンエラー」ですが、一方で、人の能力は素晴らしいこともわかります。保育士や介護士は、顔を見るだけでその人の気持ちを理解したり、計量作業を行っている作業者は、持つだけで正確な重さが分かったり、音楽家は、同時にいくつもの音を聞き分けたり、レンズを磨く職人さんは、触るだでナノサイズの凹凸を判断することもできます。このような高度な技能は訓練が必要にはなりますが、ここまで極端な例を出さずとも、現場には、失敗しないベテランと呼ばれる達人のような人がいます。この人たちは、明らかにノウハウと呼ばれる勘所やコツなど、失敗しないためのポイントをつかんでいます。
ここで、シンプルに考えてもらえば気づけるところですが、園児バス置き去り事故も、服薬の事故(誤薬)も、必ずそれを見ていれば、気がつき、事故を防ごうとするはずです。バスの座席に園児が残っていないか、忘れものなども含め、1つ1つ座席に目線を当て、すべての座席に目線を当てて確認していれば、園児が乗っていることを発見できたはずです。
実は、ノウハウと呼ばれるものは、こんな簡単でシンプルなことであり、それが出来ていないときに、不具合(不良やクレーム、事故など)が、発生するのです。そんなノウハウ(「絶対しなければならないこと」「絶対してはならないこと」)を誰も簡単にわかるものにしたが「行為保証2.0」で、ノウハウを標準化した「(製造・サービス)技術標準」になります。

※サンプル 保育技術標準「バス降車時の目視確認」
こちらは、実際に作成された技術標準(ノウハウ)です。「行為保証2.0」では、手順(業務マニュアル・作業標準など)ではなく、ノウハウ(カン・コツ)を誰もが理解できるよう標準化した帳票を決めごとにし、作業の習慣になるよう指導(訓練・練習)を行います。例えば、服薬の介助をする際に、利用者の顔を見て、その利用者の名前を呼び掛け、服薬を促す声掛けをし、服薬に記載されている氏名を見ていれば、違う利用者の薬袋を持っていることに気づいたはずです。
急いでいたり、違うことが気になっり、声をかけられたり、作業者本人は、見ているつもりが、実際は見ていない瞬間が、現場では時折発生しています。その瞬間(見ていない時)に、不具合に反応出来ていないだけなのです。皆さんの現場にいる人達は、まじめに一生懸命に仕事をしてくれている方ばかりだと思います。わざと失敗したりする人はいません。でも、不具合(不良やクレーム)は発生します。それは、作業中に反応出来ない瞬間が生まれているからです。その瞬間を無くす観点で管理を考えて行かない限り、皆さんが困っている「ヒューマンエラー」はなくせません。人が失敗する瞬間は、「見えない」「見ていない」「見られない」の3つのパターンです。これをなくせば、人為ミスはなくなります。実際に、神戸のある福祉施設では服薬事故をなくせていますし、ここの施設では、新人や応援者が来てヒヤリハットが発生しても、事故を発生させないために、なにをすればよいか、取るべき対策が明確になっています。
※詳しくは、以下にをご参照ください。
YouTube動画「ヒューマンエラーなんてない!」
(前編)https://www.youtube.com/watch?v=4yPVOAW0tvk&t=4s
(後編)https://www.youtube.com/watch?v=kVssIsC4YfY&t=8s
このたび発生した園児のバス置き去り事故の対策は、しくみ(決めごとなど)・運用(管理の問題)・土壌(意識の問題)と、様々な観点で、発生防止と流出防止など、ロバスト性(堅牢性・頑健性)を考えないといけませんが、そもそもこの事故が発生したのは、意識して見るべきところ見る習慣がないことです。また、何か気になることがあったり、声をかけられたり、急いでいたりして、本人は見ているつもりですが、※サンプル 保育技術標準「バス降車時の目視確認」のようなノウハウ実行していなかった瞬間があって「見ていない」が発生したということです。しかし、失敗しないベテランと呼ばれる達人のような人は、何か気になることがあったり、声をかけられたり、急いでいたりしも、※サンプル 保育技術標準「バス降車時の目視確認」のようなノウハウ実行してから、次の作業に移ります。
失敗したことがある経験者は、二度と失敗しないために気づいたこと「絶対しなければならないこと」「絶対してはならないこと」を明確にし、考えなくても反応できるように、体に覚えさせます。(くせ・習慣・無職の意識化)見る(診る・判断する)ことを習慣にすることで、必ず見るべきところ見るようになり、必ず不具合に反応出来るようになります。これが、失敗しないベテランと呼ばれる達人のような人がやっていることです。事故やクレーム、品質不良などの不具合を対策するには、まずは「ちゃんとした仕事・作業」の中身を具体的にすることです。「ちゃんと」にノウハウが隠れています。ノウハウは、こんなことぐらいで失敗しないことです。「行為保証2.0」では、ノウハウが誰でもわかる技術標準という書き方がありますが、まずはノウハウを明確にすることが重要です。
そして「運用」では、問題を解決するには、管理者が行っている管理(やり方)を変えなければ対策にはなりません。「指導」や「周知徹底」という言葉で丸められることがほとんどですが、実際は、管理者の伝え方が悪かったり、守っているか確認していなかったり、管理の悪さが問題になっていない状態では、運用の問題は解決できません。
「土壌」は、意識です。「しくみ」と「運用」が確立することで、管理者や作業者など当事者の意識が高まっていきます。この意識が、決まり事を守る力となり、守るのが当たり前の感覚が定着します。
お伺いするさまざまな現場で、作業者指導を行っていますが、その多くは、教育だけで、訓練まで行っていません。ルールを守るのは当たり前ですが、実際にルールを守るのは、訓練や練習をしないと守れないものです。守れる人からすると簡単なことのように感じますが、みんなが守る状況を創り出すのは、実は難しいことなのです。人は、理解したり、気づいてたりするだけで、出来たりしないものです。出来るようにするためには、必ず訓練(練習)が必要です。
よくある対策で、安全や品質で、注意喚起を行う研修やセミナー、ポスター掲示、回覧など行いますが、意識を上げることが出来たとしても、それは記憶ですので、必ず忘れてしまいます。しなければならないのは、その高い意識の先にある「習慣にする」ということです。ここまでやってはじめて「管理している」「指導している」と言えます。
「行為保証2.0」は、製造業やサービス業などさまざまな現場で、人の判断や行動基準に作業の精度を管理する手法として、体系化し、理論構築された取り組み・活動です。一般的に「ヒューマンエラー」は、ゼロにすることはできないと考えられていますが「行為保証2.0」は「見えない」「見ていない」「見られない」を管理することで、 この問題を解決する1つの解(答え)になります。
※詳しくは、以下をご参照ください。
YouTube「行為保証の発見」
https://www.youtube.com/watch?v=n_DJp-LcTNE
雑誌や新聞でも取材していただきましたが、製造業では手直しを含めた工程内不良率を0.4ppmといった驚異的な不良率で管理出来ているところもあります。
※一般的に、不良率0%=シックスシグマ(完成品不良率3ppmPPM程度)であると言われています。
今後、人の作業が、設備やロボットなどに置き換わってきますが、その設備やロボットの設定・調整・メンテナンスは人が行います。どこまで行っても、人の作業はなくなりません。人為ミスをなくす方法を持っているかいないかで、自動化や生産改善なども成果や効果も大きく変わってきます。
必ず、不良(クレーム)はなくせます!皆さん、希望持って、「行為保証」に取り組んでいただければと思います。