
行為保証を導入しようとされる方々が感じる難しさについて、少しお話したいと思います。
●製造品質に関わる再発不良を「ちゃんと」「しっかり」「丁寧に」すれば、誰でも簡単になくせる問題だと思っている
●本当に「見る」だけで不良がなくせるのか?
●不良が出るのは仕方がないことだ
...など、例に挙げればキリがありません。
行為保証の有効性を理解するまでに、いくつかの常識を変えなければ現場の問題の本質は見えてきませんが、それは割愛させて頂きます。今回お話する「難しさ」は、行為保証を導入しようと取り組まれている方々が感じておられる難しさです。行為保証は、極端に言うと「見るだけ」で不良がなくなるという方法論です。事実、製造不良は「見るだけ」で、どんな現場でも6σ管理は可能です。
しかし、この「見る」という簡単なことがなかなか出来ない難しさが、現場にはあります。細かいお話はいろいろとございますが、根底には「見てない」ことを受け入れられないということがあります。想像してみてください。自分が作業しているところに「ビスの着座を見てなかったぞ!」と言われると、ムッとした気持ちになりませんか?「見ていない」=「やる気がない」に聞こえるからです。作業者は「ちゃんと見てますよ!」=「一生懸命やってますよ!」と言っているのです。当然、作業者の気持ちとしては、真面目にやっているのに、悪い評価を受けたくないという心理が働きます。
作業者は、絶対に不良を作ろうとは思っていません。しかし、行為保証が出来ていない現場では、次の作業に目線が移ってしまったり、声をかけられたり、10回に1回程度は目線が外れます。それはノウハウが身についていないからで、やる気がないからではありません。ノウハウが身についていないのは、ノウハウを教育訓練していない管理者の責任です。
「一生懸命、仕事をしろ!」ではなく「一生懸命やってくれているのはわかっている!しかし、やり方が違っていないか?」と伝えられるかどうかです。難しいのは、このことを同じ会社の人間では、なかなか伝えられないということです。多くの場合は、「あなたはどうなんだ?」「あなたには言われたくない!」となってしまいます。
実際は、会社の姿勢、上司の見方、外部から意見、個人の意識など、様々なアプローチを行い、現場の空気を変えなければ、組織の従事する人間が、発生する問題を「他責」ではなく「自責」で考えることは、非常に難しいことなのです。「他責」だと疎ましい同僚の指摘も「自責」だとありがたいアドバイスになるのです。
これらを変えることが出来れば、品質だけでなく、安全にかかわる労災の問題や、生産性や納期の問題、原価の増加などさまざまな問題が解決できるだけでなく、人材が育てられる現場へと変わります。それらが企業にもたらす利益は莫大です。
あなたの会社におられる方々は、決して敵ではありません。ともに会社を良くしたいと思っている仲間です。あなたのやろうとしていることを理解してくれる人は、必ず周りにいます。ぜひとも、多くの現場で「行為保証2.0」に取り組んでいただければと思います。