2015年06月04日
「本気度を伝える」(商工かこがわ6月号掲載文)
加古川商工会議所より発行「商工かこがわ6月号」(2015年6月1日発行)の「エッセイ」に掲載された原稿をブログにもアップします。
はじめまして。株式会社遠藤メソッド代表取締役の遠藤勇と申します。2008年9月に、兵庫県加古川市で品質コンサルティング会社を起業しました。今日の日本は、出来映え管理の考え方をベースに品質管理を行っており、品質レベルは飽和点を迎えておりました。現状の品質管理では、一段も二段も上位の品質レベルの管理が望めないと考え、ハインリッヒの法則と行為保証(目的意識を持った動作の保証)の発見をベースに、プロセスが保証された出来映えに基軸に置いたプロセス管理手法で、品質レベルは飛躍的に向上致しました。これらの事例から完成した現場のマネジメントシステムを提供し、この行為保証という考え方を産業界に普及させ、
貢献することを志にしてから8年目になりました。今回はその活動で行っている指導のなかで、とても大切にしている「本気度を伝える」ことをお話しようと思います。
行為保証の指導において非常に重要なことがあります。それは現場の守る力をつける過程でのお話です。なかなか現場の守る力がつかない状況が、多くの現場で発生します。みなさんは、決まったことを守るようにと指導し、定期的に確認も行っていると言われます。しかし、現場は一向に守る力がつきません。この場合、実は現場の作業者ではなく、管理者の意識に問題があります。
少し違った角度から、参考事例を挙げてみると、私は妻に、ある事をする為の意識を変えられたことがあるのです。それは、便器の蓋を閉めるという意識です。ある時、妻が「お父さんは、エコやエコやと言いながら、便器の蓋さえしめられない!」と私に注意を促してきたのです。「そうか、そうか。」と若干聞き流していた私の意識を、たった2日程で見事に変えました。私がトイレから出てきた瞬間に、妻はトイレに行き「お父さん、また蓋が閉まってない!」と、強い口調で注意をしたのです。まだそのとき私は「そうかそうか」と少し油断していたのですが、また私がトイレから出るやいなや、妻はトイレに行き「お父さん、またや!」と本気で注意したのです。さすがに私も、妻の本気を感じ「まずい!」と思いました。それからの私の行動は、トイレを出る時に「蓋が閉まっていることを」「目で見て」「トイレを出る瞬間に、蓋の方を向き」「蓋が閉まっていると判断して」ドアを閉めるようになりました。
行為保証(目的意識を持った動作の保証)が出来るようになった瞬間でもありました。無意識の意識の確立し、習慣管理レベルにまで出来るようになったのです。それはプロセスが保証された出来映えを管理できている状況です。最近では、はっとして、トイレの蓋が閉まっているか不安になりトイレのドアを開けて見てみると、必ず閉まっております。これは1つの事例ですが、個人でも組織でも相手の意識を変えることの難しさは、多くの管理者が感じていることです。トイレの蓋をしめるお話は、相手に求める側の本気度が伝わった瞬間なのです。本気をどう伝えるか、ここに注力した現場のマネジメントが必要なのです。
この経験を活かし、私は以前勤めていた会社で、500名の意識を1週間で変えた経験を持っています。それは「挨拶をする」を徹底させることでした。お客様が訪問される際に、現場の社員が挨拶することを徹底しようと考えたのです。少し補足しますが、生産ラインで作業している作業者が挨拶するのではありません。作業者が手を止めて工程から離れ「いらっしゃいませ!」と挨拶する生産現場がありますが、それはさせません。なぜならば、作業者の外乱になり、工程の作業が抜ける原因になるからです。私が求める挨拶は、ラインを離れ外回りを行っているような管理者などを対象にしています。作業者には作業中に見学者と目が合った時に、会釈程度で良いとしました。ラインを離れた管理者はどんな挨拶をするか。一般的には、口頭だけで「挨拶をするように」と指示するのでしょうが、私は実際に500名の現場の社員を集めて朝礼をし、挨拶することを指示しました。一人の社員に出てきてもらい、全員の前で挨拶するように指示すると、これが思っていたとおりの反応でした。口ごもりの小さな声で、少し恥ずかしそうに「いらっしゃいませ〜」と声を発したのです。私はその場で「違う!」と500名に聞こえる地声で言いました。そして、「私が今からする、こんなを挨拶してください!」と言いました。大きな声で、そして気恥ずかしさなく、腰から上を30度程度倒し「いらっしゃいませ!」と実践して見せたのです。それから1週間、私は現場を歩くときに、すれ違う社外の人に大きな声で挨拶し、率先垂範して現場の社員に手本を見せました。課長、係長、班長、外回り業務者は、同じレベルの挨拶を期待通り行ってくれるようになりました。
本気度を伝える側に本気がなければ、伝わるわけもありません。どうしたら伝わるのかも考えずに、それが本気と言えるのかということです。もしあなたが、さまざまなシーンで、本気度が伝わらないと悩んでおられるとしたら、本気度が伝わらない以前に、本気度がどうしたら伝わるかを、本気で考えていないあなたがいませんか?ということです。これが現場管理者のマネジメントの力なのです。
昔、先輩から「弱い連隊はない、弱い連隊長がいるだけだ!」と聞かされたことがあります。その先輩には、今でも感謝しております。
posted by 遠藤メソッド「行為保証2.0」公式ブログ at 00:00| お知らせ